今や各種メディアには欠かすことのできない存在となったジャレッド・メル。
決して欧米人特有の恵まれた身体的スタイルでないにもかかわらず、彼のサーフィンはどの部分を瞬間的に切り取っても最高の絵になります。
その理由のベースにあるのはもちろん彼の技術の高さにあるのですが、同時に彼のサーフィンが静と動の繰り返しによってなされていることにあります。
ゆっくりとしたテイクオフから目に見えぬ速さのスィッチスタンス、素早いステップワークからノーズでの決めのポーズ。
その一つ一つがまるで歌舞伎役者が「見え」を切るように、瞼に焼き付きます。
そんな彼の特徴を生かすボードを長年作っていたダノーのものと離れ、2015年より自身初となるパーソナルブランド「Surf-A-Billy」を立ち上げました。
ブランド名は音楽のジャンルを現すロカビリー「Rock-A-Billy」に由来し名付けられました。
現在ジャレッド・メルはアレックス・ノスト、ロビン・キーガルと並び称される世界中のシングルフィンロングボーダーの頂点です。
その彼が遅ればせながら満を持して自分でボードを作り始めました。
もちろんその経験を疑問視する者もいますが、カリフォルニアでは「一流のサーファーによっていいボードは作られる」という基本概念があります。
シェーパーにとって最も大切なことは自分が求めるサーフィンをどう形であらわすか、ということです。
フィーリングが最も重視されるサーフィンだからこそ「いいサーフィンができなければいいボードは作れない」と言われるゆえんであり、逆に言うと「いいサーファーはいいサーフボードを作ることができる」ということになります。
ジャレッドはご存知のように最高のロングボーダーでありながら、ミッドレングス、ショートボードに至っても最高のスキルを持っています。
そのことによって彼が作るボードは何にもとらわれることがありません。
実際にジャレッドが最初に日本に持ち込んだボードはダノーの「ジャレッドメルモデル」をもとにチューンナップした「NEWジャレッドメルモデル」と「ノーズライダー」そして「フィンレス」と多種多様です。
ロングボードのリバイバルから早30年の月日が経とうとしています。
その間、ロングボードのライディングスタイルは大きな変遷を遂げてきました。
オールラウンドやハイパフォーマンスからノーズライダー、そしてノーズライダーからピッグ形状やスピードシェープへの移行がなされています。
その中でジャレッドメルは最先端をけん引しています。
新しい「ジャレッドメルモデル」は「スイング」と呼ぶ動きを重視するために、よりピッグ形状が強まり、ボトムはラウンドして水平方向の急激なカットバックや波のフェースに合わせたコントロールを容易にします。
その他、クラシックを基本としながらも前衛的なフィーリングも取り入れているところがこの "Surf-A-Billy" の魅力です。