『孤高の天才が創る世界最高のボード』
13歳のころ、故ドナルド・タカヤマから手ほどきを受け、自らのサーフヒストリーを歩き始めたロビン・キーガルは、その後デューイ・ウェーバー、タイラー、ダノーという当代きっての一流人気ブランドのチームライダーとして頭角を現し、2004年満を持して(旧)クリームを立ち上げました。
芸術性の高いカラーリングとボードに込められた一貫性のあるこだわりによって発売当初より、オールラウンド系のボードや操作性を犠牲にしたノーズライダーに退屈感を感じていたカリフォルニアのアップカマーたちに受け入れられ空前の大ブームを起こしました。
その後も、「ショートボード革命がもし起きていなかったら、ロングボードはもっと進化していたはずだ。再進化した真のロングボードを作る」と、一貫したコンセプトにより世界中のシングルフィンロガーたちを興奮させました。
それによってアレックス・ノスト、CJネルソン等のトップサーファーが彼のもとに集結し、2005年ころには現在に続くシングルフィンロングボードのムーブメントの主役に躍り出てきました。
初めてファクトリーを構えたカピストラーノビーチからブランド名をクリームからガトヘロイに変更し、今や伝説となったコスタメサのスーペリアアヴェニューの1653番地にファクトリー兼ショップをオープンさせました。
現在名前を耳にするカリフォルニアやオーストラリアほぼすべての有名なサーファーはこの時期に彼のショップを訪れたでしょう。
彼のもとを訪れたサーファーたちは彼のシェープ理論に驚き、またそれ以上に忘れかけていた「サーファー」という特殊な人種の生き方を再認識することになりました。
現在30歳前後からそれ以下の世代のすべてのサーファーたちは彼のシェープしたボードと彼の生き方の影響を受けているといっても過言ではないでしょう。
ロビンは13歳の時にはすでに「シングルフィンロングボードだけが波の上で機能する」という確信を抱いていました。
それは言葉で説明するのは難しいのですが、シングルフィンロングボード以外のショートボード、ファンボード、サイドフィン付きのロングボードなどはボードの上に立っただけでは加速されず、シングルフィンロングボードだけがその自重による推進力によってグライドすることができるということを意味します。
だから「波の上をすべる(機能する)」といえるのはシングルフィンロングボードだけなのです。
だからロビンは世間でいろいろなサイズやタイプのボードが流行する兆しを見せてもそれらを追随することは一切ありません。彼の頭の中では「機能する」ことが重要視されているので、難しすぎてだれにも乗れないようなボードは作る必要はなく、また奇を衒っただけのいびつな形をしたボードを作ることはありません。
流されない生き方を貫くのは容易でないことは誰もが知っています。
そのことによってトーマスキャンベルは「決してぶれることのない唯一無二のシェーパー」として最大級の賛辞を送っています。
2010年ころのカリフォルニアでは彼の影響力はすでに頂点に達していました。それはビーチに行けばガトヘロイだけではなく、ガトヘロイの模倣のボードが溢れていたことも意味します。
サーフィンを遊びの道具と考え、格好いいものに格好よく乗りたいと考える周りのサーファーたちに対し、唯一ロビンだけが真剣にボードを作っていたからです。
すべてのボードをハンドシェープする彼の生産能力では多くのサーファーにボードを行きわたらせることができず、そのためにたくさんの模倣シェーパーが出現したのです。
アブストラクト、ピッグ、ピンチレール、ポイントノーズ・・・・その状況に嫌気と失望を感じたロビンはそれまでの名声を投げ捨て、2012年よりフランスの南西部に拠点を構えました。
フランスに移住した後も「いいボードを作るには一流のサーファーでなければならない」という考えは変わりなく、その恵まれたロケーションによって彼のサーフィン、サーフボードに対しての意識はより一層研ぎ澄まされることになりました。
そういった意味でロビンの作るボードは今やだれにも追随されることがなくなりました。なぜなら一般的なシェーパーと彼の間にはもはや埋めきれることができないほどの大きな意識と知識の差、スキルの差、もちろんサーフィンの技量、そしてサーファーとして最も重要である生き方の違いがあるからです。
前述のように決して奇を衒うことがなく伝統的な名作といわれるボードに着目し、そのコンセプトを最大限に引き出すチューニングを施します。また当時その名作を作った本人を訪ね、意見を求めることも怠りません。ボード作りに対する執着は常軌を逸しているほどです。
またロビンはボードのアウトラインについて誰よりもこだわっているといえます。それは「アウトラインはいいボードの必須条件。すべてはアウトラインから導き出される」と考えています。完璧なアウトラインを繊細でありながら上質のシルクのように滑らかな手触りをもつレールフォイルが包み込み、波との一体感を生み出します。
それゆえに作りだされたボードは「完璧」と呼ばれるにふさわしいボードです。
彼のもう一つのブランド「クリーム」が伝統的なカリフォルニアスタイルを意味するのとは異なり、ガトヘロイはクラシックボードをフルチューニングしたものと例えられます。
それは前述のように「当時のボードはショートボードの影響がなかったらもっと進化したはずだ」と考えているからです。
恐ろしいほどにスピード性が高く、それによって生み出される安定性、コントロール性が特徴です。
誰もが一度でもそのレールに触れ、波の上をすべると衝撃を受けるでしょう。未体験の世界がそこにあります。
ロビン・キーガルの作り出すガトヘロイのボードが世界最高と呼ばれるのはこのような理由があるからです。